SPF

スプルース・パイン・ファー
Spruce-Pine-Fir

科名属名呼称一般名学名
マツ科マツ属ロッジポール・パインLodgepole PinePinus contorta
モミ属アルパイン・ファーAlpine FirAbies lasiocarpa
トウヒ属ホワイト・スプルースWhite SprucePicea glauca
トウヒ属エンゲルマン・スプルースEngelmann SprucePicea engelmannii

特徴

「SPF」とは、スプルース(Spruce)、パイン(Pine)、ファー(Fir)の頭文字からとった呼称で、それぞれ、マツ科のトウヒ属、マツ属、モミ属の樹種を総称しています。カナダ西部地域におけるSPFの製材生産量は2018年実績で3,179万㎥となっており、同地域の製材生産量の84%を占め、カナダ全体の製材生産量に対しても55%と大きく過半数を上回っています。SPFが住宅建設用の木材として広く世界中で使用されている背景には、このような豊富な資源とそれを有効に活用し、安定した供給を実現する生産加工体制が整っていることがあります。

SPFは樹種混交の形で生育していますが、強度特性も非常に似通った範囲に分布しているため、カナダでは通常樹種ごとの区分は行わず、SPFという樹種群として製材され、市場でもSPFとして流通しています。カナダの針葉樹製材規格であるNLGAルールがSPFという樹種群をひとつの樹種と同じような分類として扱っているのも、このような製品特性と市場の取扱慣習に配慮したものです。白木系統で、節が小さく、加工性に富み、使いやすく、重量比強度にも優れているSPFは、建築用材として欠かすことのできない樹種といえます。

カナダ西部の森林

カナダ西部に位置するブリティッシュ・コロンビア(BC)州とアルバータ州は、北緯49度から60度の北海道よりも北の高緯度に位置しています。太平洋沿岸を北上する暖流の影響で比較的温暖な気候に恵まれ、カナダの針葉樹蓄積の約60%がこの西部地域に生育しています。カナダの西部地域の森林は、BC州の沿岸地域と、それ以東のロッキー山脈を越えたアルバータ州に至るまでの西部内陸地域とで大きく林相を異にします。沿岸地域では温帯針葉樹林が広がり、ダグラスファー、ヘムロック、イエローシダー、ウェスタンレッドシダーといった、日本と似通った林相の樹種が数多く生育しているのが特徴です。一方、西部内陸地域では、海からの湿った空気が山脈を越えるときに雨や雪となって降り落ち、内陸性の乾燥した気候となるとともに、高緯度であるため冬場の寒冷な気候により、森林の植生は亜寒帯針葉樹林となります。日本の北海道に似た林相を呈し、この地域で主に生産される樹種は「SPF」と総称されています。

ディメンションランバー

2×4工法では、あらかじめ規格化され工場加工された構造用製材(=ディメンションランバー)を使用します。2インチという厚み寸法を基準として、4インチから12インチまで2インチ飛びという簡略な寸法体系が特徴です。寸法体系の中には加工後の乾燥による収縮率も加味されており、適切な方法に人工乾燥された木材が乾燥材として出荷されています。カナダの針葉樹製材品は「NLGAルール」という規格体系の下で生産・管理されています。「NLGA(National Lumber Grades Authority)」は、カナダで生産される製材の格付規格の制定と運用を目的として1971年に組織された機関で、このNLGAが制定した格付規則がNLGAルール(NLGA Standard Grading Rules for Canadian Lumber)です。

日本の建築基準法上での位置づけ

枠組壁工法(2×4工法)ではJAS格付け材を用いることが規定されていますが、法律の改正により北米などの海外の規格の製材も使えるようになりました。枠組壁工法技術基準を定めた平成13年国土交通省告示1540号の中で使用できる材料について定められており(第2第三号)、「国土交通大臣がその許容応力度及び材料強度の数値を指定した」木材としてこれらの海外の資材を使用することができます。

参考資料:ツーバイフォー工法用カナダ製材の国土交通大臣基準強度指定書改訂(平成21年3月13日)

寸法調整係数(寸法に応じて上記の基準強度に乗じる係数)

寸法形式応力の種類
FcFtFbFs
104, 203, 204, 4041.001.001.001.00
206, 4060.960.840.84
208, 4080.930.750.75
2100.910.680.68
2120.890.630.63

Jグレード

2×4住宅用製材の日本向けに用いられる品質等級格付けのことです。明文化された基準はなく、日本の2×4住宅会社ごとで少しずつ内容が異なります。通常、節、丸身などは認められず、そり、曲がりに対しても厳しい基準になっています。北米市場で流通する2×4構造用製材に比べ高値で、産地にとっては付加価値製材のひとつです。近年は北米のホームセンター向けでも同様の上級グレードニーズが増えています。