カナダツガ

Western Hemlock, Amabilis Fir
学名: Tsuga heterophylla, Abies amabilis
樹種群: Hem-fir(N)

Western Hemlockの植生分布
(“Tree Book”, BC Ministry of Forestsより)
Amabilis firの植生分布
(“Tree Book”, BC Ministry of Forestsより)

特徴

カナダで西部太平洋岸に生育するHem-Fir(N)と表記されるカナダツガは、ウェスタン・ヘムロック(Western Hemlock 学名:Tsuga heterophylla、マツ科ツガ属)とアマビリス・ファー(Amabilis Fir 学名:Abies amabilis、マツ科モミ属)という似通った樹種特性を有する樹種群として規定されています。これに対して、米国でHem-Firとして表記されるベイツガは、ウェスタン・ヘムロックのほかに、ホワイト・ファー(White Fir)、パシフィック・シルバー・ファー(Pacific Silver Fir)、グランド・ファー(Grand Fir)、ノーブル・ファー(Noble Fir)、カリフォルニア・レッド・ファー(California Red Fir)といった樹種を含む樹種群として規定されており、Hem-Fir(N)とHem-Firではその構成する樹種が相違しています。このため、北米ではHem-Fir(N)とHem-Firが明確に区別されています。Hem-Fir (N)の(N)は「米国で生育・生産されたものではなく、それより北(North)に位置するカナダで生育・生産されたHem-Firである」ことを表し、Hem-Fir(N)は、より寒冷な自然環境の中でゆっくりと成長することで密度が高く、強度・剛性ともにHem-Firを上回るだけでなく、構成樹種が少ないことで製材品の強度バラツキが少ないという大きな特徴があります。

樹高は35mから55m、直径は90cm程度です。

強度特性

ウェスタン・ヘムロックアマビリス・ファー
密度(kg/m3)(含水率12%)480445
比重(含水率12%)0.430.39
硬度(N)2,7401,820
曲げヤング係数(N/mm212,30011,400
曲げ強度(N/mm281.168.9
縦圧縮強度(N/mm246.740.8
横圧縮強度(N/mm24.53.6
せん断強度(N/mm26.57.5
収縮率4.2%4.4%
出典: © 2023 Pacific Hem Fir

用途

強度が高く、構造材として広く利用されます。特に高い曲げ強度が求められる横架材(構造用集成材や無垢材)としての利用はその代表例です。ウェスタン・ヘムロックとアマビリス・ファーの両樹種は、太陽光が少ない生育環境に耐える性質(耐陰性)があるため、枝の少ない幹を形成するので、通直で節が少ない製材品が得られやすい特徴があります。そのため、モールディングやパネリングなどの内装仕上げ材、家具、ドア、木製窓への加工に適しています。

等級

樹種群等級樹種群 等級 基準強度(N/mm2E
(kN/mm2
FcFtFbFsFcv
Hem-fir(N)E12019.214.725.22.16.012.0
Fc, Ft, Fb, Fs: 圧縮、引張、曲げ、せん断の基準強度(国土交通大臣指定書による)
Fcv: めり込みの基準強度(平13国交告第1024号による)
E: ヤング係数(カナダ産ツガ構造用製材の性能評価検討委員会の評価による)

強度、剛性が高く、カナダではHem-Fir(N)としてHem-Firと異なる樹種区分がなされています。Hem-Fir(N)のうち、「格付け規格JPS1-05」に基づいて格付けされたカナダツガ等級製材「E120」は平12建告第1452号第七号に基づく国土交通大臣の基準強度指定を受けており、そこで与えられた基準強度を許容応力度計算などの構造計算に用いることができます。格付け規格JPS1-05は製材の日本農林規格(2007年JAS1083)の構造用製材と同様の目視等級区分による規格であり、日本の木造軸組住宅やその他建築用に使用されるHem-Fir(N)製材を対象として制定されたカナダの正式な国家規格です。JPS1-05は北米で一般的な平割や板割などのディメンションランバーを対象とした規格体系と異なり、日本の木造軸組住宅に使用される正角類や割角類を対象とした規格体系となっています。そこでは、正角類は柱に多く用いられることを考慮して節、割れ、ねじれなどに関する制限を割角類より厳しくすることなどの規定が盛り込まれており、木造軸組住宅の工法、製材の使用方法などに留意した規格体系が構成されています。

E120の基準強度は結果的に「べいつが・無等級」と同じ値が与えられていますが、JPS1-05に基づいて厳格に格付けされているので強度特性のばらつきが少なく、「べいつが・無等級」と同じ基準強度であっても、その意味は大きく異なります。また、Hem-Fir(N)は釘の保持力が高いので、面材張り耐力壁、面材張り水平構面、および金物補強がなされた部材端接合部の耐力が大きく向上します。

格付け規格JPS1-05の格付マーク