持続可能な森林経営

カナダの森林は、森林が永続的に健全で豊富であり続けることを保証するために持続可能な方法で管理されています。法律により、包括的な伐採計画は、伐採が行われる前に政府によって承認されなければなりません。たとえば、伐採計画は、生態系の劣化を防ぎ、先住民の権利、生物多様性の価値を尊重し、危険にさらされている野生生物種を保護する内容である必要があります。法令遵守は州政府によって検証されています。検証の二段階目として、カナダの主要な林産物企業はすべて、FSCおよびPEFCの国際的に認められた第三者の森林認証スキームに参加していることが求められます。

森林認証

行政による厳格な法規制によって伐採行為や遅れのない更新を管理しているだけではなく、カナダは国際的に認知されたFSCやPEFCなどの森林認証制度で認証された森林面積でも世界をリードしています。2022年現在、カナダの森林認証面積は1億7,300万ヘクタールにのぼり、これは世界の全認証林の37%に相当します。これら第三者機関による森林認証制度による認証林の広さは、合法で持続可能な森林管理による伐採によって林産品が産出されていることのもう一つの証です。カナダウッドのメンバー企業が日本のバイヤーに出荷するすべての木材が、合法で持続可能な林産物として第三者認証を受けています。

伐採と供給

持続可能な森林経営の本質的な原則は、過剰伐採を確実に防ぐことです。州政府が林産企業に指示する事により、一般にAAC(Annual Allowable Cut)として知られている年間許容伐採量を策定し、伐採を規制しています。2021年はカナダで合計69.8万ヘクタールの森林が伐採されましたが、それはカナダの総森林面積のわずか0.2%にすぎません。

カナダ全体の森林蓄積量は安定しており、持続的に管理されています。2022年の森林面積は3億6,700万ヘクタールでした。これは2019年の3億4,700万ヘクタールより増加しています。このような森林面積は、3Dの航空撮影や衛星による画像解析によって測定されています。下の表に示されているとおり、実際の森林伐採は森林資源が持続可能となる範囲内に常にとどまっています。カナダ全体の木材供給量は各州が定める年間許容伐採量の合計以下となっています。

木材供給可能量と実際の伐採量*

20162017201820192020
持続可能な木材供給量 (m3) 222,967,632219,237,417217,869,547218,100,000215,300,000
実際の年間伐採量 (m3) 157,377,158155,764,849157,316,042142,168,691141,100,000
供給可能量に対する年間伐採量の割合 70.5%71%72%65.2%65.5%
*持続可能な木材供給量(カナダ全体)は各州の年間許容伐採量の合計

このカナダ林業統計によれば、持続可能な森林伐採量に対して実際に伐採された量は65%から70%にとどまっていることがわかります。

ブリティッシュ・コロンビア(BC)州からの持続可能な供給

BC州では80年から100年の長い再生サイクルを念頭に置いて年間許容伐採量を調整しています。2022年から2024年の間の年間許容伐採量は6,120万m3となっています。

立木材積に関して考える場合、対日輸出される林産物の大半はBC州内から出荷されるため、同州の統計資料を調べるのが最も適切です。

同州の林業担当部局が提供するデータによれば、2020年度の経済林立木材積は9,806,594,120 m3でした。2021年度には立木材積は9,909,002,724 m3となっており、一年間に102,408,604 m3増加しています。この増加分はさまざまな木材供給関連の分析に反映されます。すなわち森林再生、天然更新に関する分析だけではなく、伐採や森林火災および虫害による被害の分析要素になります。

森林再生

伐採権を持つ林産企業に対しては、森林再生作業を行うことが法で義務付けられています。BC州では樹木1本の伐採に対して平均3本の苗木が植林されています。2018年から2022年の間に年間平均2億7,950万本の苗木がBC州内で植林されました。2021年度に植林された苗木は3億100万本でした。林産企業は植林が義務付けられているだけではなく、植林地の更新が適切に実現しているかどうかを現場に赴いて確認する義務があります。州政府は森林再生作業義務を遵守させるための総合的な監視体制が形成されています。義務遂行を怠る行為があれば、罰金や伐採権剥奪も行使されます。カナダ全土を見ると、全森林の92%以上が公有林です。各州の森林再生の要件はBC州のそれと類似していて、2021年にはカナダ全土に6億250万本の苗木が植えられました。2050年までにネットゼロカーボンを達成するための方策の一部として、カナダ連邦政府は2030年までに20億本の植林を行うと2021年に発表しました。

持続可能な開発目標(SDG’s)

カナダの森林は木材産出だけのために管理されているのではなく、行政はレクリエーション、観光、地域社会による活用、生物多様性の保持を促進し、先住民の文化と彼らの地権も尊重しています。カナダの森林経営の手法はSDGの基本理念と一致しており、自然林、野生動植物および地域社会のバランスに配慮しています。この点において商業的な木材産出に力点をおいたプランテーション型の林業モデルとは異なります。生態系のバランスを保ち、森林面積の減少が生じないように、木材産出量が管理されています。法体系、法の遵守および森林認証制度を背景として、カナダの森林は持続可能な管理がなされています。たとえ気候変動、森林火災および虫害などで森林の一部が損なわれることがあったとしても、森林蓄積量のデータを見るとカナダ全土の木材産出量は安定しており、対日輸出の主役であるBC州では増加傾向にあることが明らかです。