カナダで生まれた高耐力壁
Midply Wall System

Midply Wall System(以下MPWとする。)はカナダ生まれの高耐力壁です。カナダの研究機関であるFPInnovationsのDr. Erol Varogluとブリティッシュコロンビア大学(UBC)のDr. Siegfried Stiemerとの共同研究により開発されました。ここ日本においても様々な仕様のMPWの面内せん断試験が行われています。その強さの一例として、壁倍率換算値で約7~21倍の水平耐力を確認しています。また、MPWは初めは枠組壁工法用の耐力壁として開発されてきましたが、近年は軸組工法用のMPWも開発されてきており、どちらでも使用することができます。

誰でも使用することができる
Open Design

MPWは誰でも使用することができます。MPWの知的財産権は開発者である両氏が保有していますが、“Open Design”という概念のもとで、技術公開を行っています。“Open Design”とは次の3つの条件から成り立っています。
1) “Midply Wall System”という用語を一貫して用い、このとおりの表記とすること。
2) FPInnovationsのDr. Erol Varogluとブリティッシュコロンビア大学のDr. Siegfried Stiemerが “Midply Wall System”の開発者であり、知的所有権を保持している。“MidplyWall System”に関連する記述を行う場合はこれらのことを注釈として記入すること。
3) “Midply Wall System”をさらに発展させる技術開発が推奨される。その場合も以降、“Open Design” の要件が適用される。
これら3つを誓約するのみで、誰でもMPWを使用することができます。MPWを使用するための制約はありません。

どこにでもあるもので
どこにもないものを

MPWは汎用的な材料と工具で作ることができます。面材はOSB、枠材はディメンションランバーやカナダツガ、その両者を接合するものは一般的な釘です。MPWと横架材や柱との接合にはビスを用います。ビスも特殊なものを用意する必要はなく、日本で入手することができるもので強度の確認を行っています。そしてMPWの組立てや現場で施工する時に必要な工具も一般的に使用されている工具です。MPW の材料と工具の用意にも障壁はありません。汎用的な材料と特殊な工具を必要としないMPW。しかし、そこから生じる水平耐力は他の耐力壁と一線を画します。

強さの秘訣は構成を変えること
枠材で面材を挟む

MPWの強さの秘訣は構成を変えることにあります。ここに強さの理由があります。通常の、面材を使用した耐力壁は枠材に面材を打ち付けます。別の見方をすると面材で枠材を挟み込みます。それに対してMPWはその構成を反対にしました。まるでコロンブスの卵のように。MPWは面材を枠材で挟み込みます。単純なこの発想の転換ですが、そこから生み出されるメリットは計り知れません。この転換は、MPWに強度をもたらすだけではなく、面材を用いた耐力壁の脆性的な破壊を防ぎ、さらに靭性に富む構造へと導きます。

釘の強さを最大限に活かして
強度を発現する

そのメリットの1つが釘の2面せん断。面材を枠材で挟むので長さ75~90mm程度の釘でも容易に2 面せん断の機構が発現します。そして、2 面せん断は強度が発現する箇所が2ヵ所。それに対して1 面せん断は1 ヵ所。このことが同じ釘の本数で壁を構成した場合、強度が高くなる理由です。MPWの仕様の2 面せん断は1面せん断の場合に比べて耐力が約80%高いことを実験で確認しています。

面材耐力壁の弱点を乗り越え
脆性的な破壊を防ぐ

また、構成を変換することにより脆性的な破壊を防ぐ構造になります。このことが発想の転換によるメリットの 2つ目。面材を用いた耐力壁における脆性的な破壊として釘頭のパンチングアウトや面材の端切れ等が挙げられます。そしてMPW の構造はこれらを防ぎます。MPW の構造では釘が枠材の平部に打ち付けられます。このことにより釘が面材に直接打ち込まれるために生じる釘頭のパンチングアウトが抑えられ、さらに面材への釘のめり込みを防ぎます。また、釘列と面材の縁端距離が十分に確保されるので面材の端切れを防ぎます。その結果、安定した耐力を発揮します。

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