小さな木材と釘によるNLTは
単純な構法で大面積の面材を製造できる

Nail Laminated Timber(NLT)は、小さな木材を釘のみで相互接合してつくるもので、壁や床などの部位に用いることが可能です。釘を打ち付けるだけの簡易な方法で部材どうしの接合を行うので、接着剤を必要とする集成材などに比べて、製造に伴う設備投資を抑えることができます。SPFやカナダツガなど、さまざまな樹種や断面寸法のものでNLTをつくることが可能です。カナダで100年以上の採用実績があり耐久性について証明されています。

釘による高い接合力が魅力のNLTは
耐力面材としての利用価値が高い

NLTは小さな木材を釘で強固に接合したものであり、構造材としての強度は元の木材を上回ります。水平構面(床・屋根)や耐力壁といった耐力要素として最適なコンポーネントといえます。床材として採用した事例の1つとして「Mountain Equipment Co-op Head Office in Vancouver」(カナダ)があります。この建物では、NLTの天井(床)を、NLTを支える柱・梁とともに露しとしたほか、水平剛性の高さを生かして、片持ち梁のない軒天井を実現しています。このほかには、NLTはエレベーターシャフトとしても採用されたケースがあります。

曲線を表現できるNLTが
新時代の木造建築を切り開く

NLTの魅力は自由な造形が可能なことにもあります。木造の大規模施設では、湾曲集成材のニーズも多いですが、製造コストが高く、アーチなどの自由な曲線を表現するのは容易ではありません。一方、NLTでは、形状に合わせて小さな木材を少しずつずらしながら釘で接合することができるので、通常の製材で自由な形状を表現することが可能です。カナダでは、構造的な強度のみならず、造形の自由度も高く評価され、「Samuel Brighouse School Atrium」や「Tsingtao Pearl Visitor Centre」に採用されています。1つ1つ表情の異なる小さな木材を曲線状で表現した天井・軒天井は、木造の新たな可能性を感じさせます。

断熱や調湿の機能も併せ持つNLTは
室内空間をより快適なものとする

木材が塊として現れるNLTは木材が持つ2つの性能を十分に発揮します。木材は熱伝導率がほかの材料に比べて低いので、冬季に人が触れても冷たく感じないなど、建物内の温熱環境を良好に保つことができます。加えて、湿度を調整する機能を併せもちます。高温多湿な日本では、夏季に室内の湿気が壁内に浸入して、壁体内結露を引き起こすという“夏型結露”が懸念されます。これを防ぐには、室内の壁や天井に調湿機能を持たせる必要があります。その方法はさまざまですが、木材であるNLTは、調湿作用があるのでその対策に有効です。NLTは断熱や調湿という観点においても、その効果を発揮します。