山形トラス梁
エンジニア: 山田憲明構造設計事務所
用途: ホールや体育館等の屋根
使用部材
上下弦材: ディメンションランバー204~212
束材: ディメンションランバー404~406
接合具: ビス
適用スパン: ~20m
日本は降雨が多いため、一定の勾配もった屋根、特に建物幅が大きくなる場合は切妻屋根が多い(片流れ屋根だと一方の屋根高さが過大になり不経済になるからである)。屋根勾配を最低3~4寸勾配以上確保できる場合、軒レベルより上に高さ方向のスペースが生まれるため、大スパンを支持できるトラスを配置することができる。トラス梁の形状は様々なものが考えられるが、切妻屋根に最もフィットするのは、屋根面に沿って上弦材を、軒レベルに水平に下弦材を配置する山形トラス梁である。
この山形トラス梁は、常時鉛直荷重に対して、上弦材には主に圧縮力および曲げせん断力、下弦材には主に引張力が生じる。このため、トラスの構成で特にポイントになるのは、上弦材の曲げ応力の低減と、引張力を負担する下弦材の継手のディテール、そして、一節点に多数の部材が集まることによる接合部の混雑の解消である。
主に圧縮力および曲げ・せん断力を負担する上弦材は、数枚の2インチ材を材厚分だけ離して合わせて束ねた挟み梁形式とし、棟位置で屈折させることにより山形フレームをつくる。上弦材の端部から頂部までの寸法が2インチ材の最大定尺20フィートを超える場合は、中間にラップ形式の継手を設ける。上弦材の横座屈は、屋根面にOSBや構造用合板などで構面をつくることで抑える。
主に引張力を負担する下弦材は、上弦材と同様に数枚の2インチ材を挟み梁形式で構成する。下弦材をスパン全長に引き通すため、2インチ材をラップ形式の継手で連結していく。
以上の構成によって屋根の外形と軒レベルの水平ラインとで大きな三角形ができるが、上弦材の材長が大きい場合は、屋根荷重によって上弦材の曲げ応力と変形が過大になってしまう。そこで、三角形の内部をフィンクトラスで構成することとした。上弦材の中間部を圧縮束で支持し、この圧縮束を下弦材と頂部付近から降ろしてきた吊束で釣り合わせるシステムである。圧縮束には座屈しにくい4インチ材、引張となる吊束は2インチ材を用いている。
上下弦材や吊束を複数の挟み梁形式とし、各接合部で奇数材と偶数材で交差するように部材構成を工夫することで接合部の混雑を解消でき、構成材の数を変えることで荷重やスパンの大小に対応させることができる。更に、仕口や継手部分にはせん断面が多くできるため、多面せん断による効率的な応力伝達が可能になる。接合部には構造用ビスを用いれば簡易なディテールで実現できる。
上弦材と圧縮束の仕口は、上弦材の隙間に先端を枘加工した圧縮束を差し込みビス留めする。圧縮束と吊束と下弦材の接合部では、まず吊束と下弦材を挟み梁形式で接合し、圧縮束を交点から少し偏心させて吊束に挿し込むディテールとしている。これによって吊り束には曲げモーメントが生じるため、材せいをアップしている。吊束と上弦材の接合部も吊束を偏心させて上弦材に挿し込むことで接合部の混雑を解消している。