縦格子型耐力壁
エンジニア: 山田憲明構造設計事務所
用途: あらゆる建物の耐力壁
使用部材
縦格子材: ディメンションランバー204
縦格子材(端部):ディメンションランバー404
縦枠材: 平割材60×120
横枠材: 平角材120×180
接合具: ビス
水平耐力: 壁倍率相当で5~7倍程度を想定
建物の外壁の計画では、外部への眺望や採光・換気のための窓と、耐震耐風のための耐力壁が取り合う。また、外壁は建物の顔になる場合が多いことから、耐力壁を設けるにしても、意匠性の高いものを配置したいケースは多い。このような背景から、透過性・意匠性・耐震性の高い耐力壁として、ディメンションランバーを主体にした縦格子形耐力壁を考案した。縦格子は日本の伝統的な意匠であり、建具や欄間など、古来から様々なデザインに取り入れられている。
縦格子形耐力壁は、隙間を設けながら2インチ材を縦に並べた縦格子ユニットをつくり、その上下左右に設けた縦横の枠材を介して軸組に取り付ける。縦枠材を軸組の柱にビスで止め付けるため、ビス打ちのスペースとして縦格子ユニットと縦枠材の隙間を大きく設けている。また、縦格子ユニットは横枠材にホゾ差しとし、横枠材はドリフトピンやビスで横架材に接合する。格子ユニットのレイアウトは様々なものが考えられ、耐力壁の性能と美観をコントロールすることも可能である。
縦格子形耐力壁に加わる水平力は、横架材→横枠材→縦格子ユニット→横枠材→土台の順にせん断力として伝達される。せん断力の伝達は、横架材と横枠材間はドリフトピンまたはビス接合、横枠材と縦格子ユニット間はホゾ接合の支圧によってなされる。縦格子ユニットがせん断力を負担するとユニット自体が回転しようとするが、これを上下の横枠材で拘束し、横枠材に生じるせん断力は更に外側にある横架材と縦枠材を介して柱に伝達させる。この際、縦格子ユニットの両端は大きな圧縮・引張軸力を負担するため、ユニット両端だけ404材を使う。404材と横枠材の接合はLSB接合等によって一定の引張耐力を持たせられると耐力壁としての性能は更に向上すると考えられる。縦格子ユニットは、隣接するディメンションランバー同士のせん断力の伝達はビスによってなされるが、1本の構造用ビスで3材のディメンションランバーを貫通させ、より少ない本数でせん断性能を向上させる。