ハイブリッド張弦梁
エンジニア: 山田憲明構造設計事務所
用途: ホールや体育館等の屋根
使用部材
上弦材: ディメンションランバー2×4~212
下弦材: 丸鋼(SS400、SNR295等)Φ12~20
束材:ディメンションランバー4×4
接合具: ボルト、ビス
適用スパン: ~10m
張弦梁は、上弦材を曲げ・せん断応力および圧縮軸力を負担させる梁材とし、下弦材を引張軸力のみを負担させる細い鋼材等にすることで、長スパンを持つ大空間を軽快な美観で実現する構造である。本提案は、上弦材に2インチ材による挟み材、下弦材に丸鋼、束材に4インチ材を用いる。
常時荷重時に主に圧縮力および曲げ・せん断力を負担する上弦材は、数枚の2インチ材を材厚分だけ離して合わせて束ねた挟み梁形式とし、ラップ形式の継手を設けながら奇数枚と偶数枚の挟み梁を交互に繋いでつくる。上弦材の横座屈は、屋根面にOSBや構造用合板などで構面をつくることで抑える。張弦梁では、積雪や風による偏荷重や吹き上げに対しては上弦材のみで抵抗させるため、不安定状態や過大な変形を生じないよう、上弦材に一定の曲げ剛性と耐力を持たせる必要がある。引張力のみを負担する下弦材は、強度と剛性の高い鋼材を使用することで部材径を細く抑え、長さ調整や張力コントロールがしやすい丸鋼を採用する。圧縮軸力を負担する束材は4インチ材を用いて座屈しにくくする。
上弦材と束材の接合は、先端にホゾ加工した束材を挟み梁に挿し込んでビス止めし、支圧で応力伝達を行わせる。束材と下弦材の接合は、束材の木口にスリットを設けておき、ここに角度を持った2本の丸鋼の羽子板と支圧プレートを挿し込み、1本のボルトで止め付けて行う。束材の圧縮軸力は、木口の支圧力によって支圧プレートに伝達され、2本の羽子板には支圧プレートからボルトのせん断力によって分力として伝達される。スパン両端部における上弦材と下弦材の接合は、方向を急変させながら大きな軸力を伝達させるため、ディテールには最も注意を払う必要がある。そこで、3材構成となっている上弦材の2インチ材の内、中心の材を途中で止め、そのスペースに飼木を挿し込んで両側の2インチ材にビス止めで固定し、飼木を貫通させた下弦材の丸鋼を座金とナットで定着させる。