二酸化炭素削減 の取り組み 

気候変動を低減ー持続可能な森林管理で貢献

森林は二酸化炭素(CO₂)を吸収し蓄積してくれるため、気候変動の軽減に大きく貢献します。気候変動が紛れもない事実となった現在、優れた管理下にある森林が環境にも経済的にも非常に大きな恩恵をもたらし、気候変動を軽減するために重要な役割を担っていることに疑いの余地はありません。健全な森林は炭素を自然に循環させ、森が林産品に姿を変えても、炭素は数十年あるいはそれ以上にわたって固定されます。この点から世界の森林面積の約1割を占めるカナダの広大な森林は、炭素の一大貯蔵庫といえるのです。

気候変動が森林におよぼす打撃を抑制するために、カナダの森林産業は革新的な森林再生施業により森林の炭素固定量を増やすと共に、気候変動に合う森林のモデリングと将来の不確実な状況に耐えうる強い森林育成を目指し森林樹木の多様化推進にも注力しています。森林保護の中でも特に際立っているのが徹底した森林再生事業活動です。カナダでは、公有地の伐採後は速やかに森林再生を行うことが法によって義務付けられており、年間6億本もの苗木が植林されています。世界有数の林業国となって100年以上経った今も、森林減少率がほぼゼロである大きな理由がここにあります。

またカナダでは、気候変動に取り組む運動が様々な団体によって全国的に行われています。例えばBC州では、「Forests for Tomorrow(明日のための森林)」プログラムの下で、森林火災などの自然災害による甚大な被害を被ったまま、まだ伐採されていない主要地域に若い林相を再び蘇えらせようとしています。

ライフサイクル評価の高い木材

カナダは木材の使用促進運動にも積極的に取り組んでいます。木は生長するときにCO₂を吸収してこれを固定し、木造建築物は建築中も建築後も、エネルギー消費量が相対的に少なく、化石燃料への依存が軽減できる上、形や用途を変えて繰り返し利用することが可能です。気候変動の軽減に向けて、木材こそが最善の選択といえる理由がここにあります。BC州、ケベック州、ニューブランズウィック州では州政府が率先して公共建築における木材の使用を促進する政策を打ち出しています。

気候変動の低減やエネルギーの削減、資源の無駄をなくすためには木が最も効果的です。コンクリートや鉄はその製造過程で二酸化炭素を排出しますが、木材はCO₂を固定します。特にライフサイクル全体を通じた排出量を考えるとき、木材は極めて効率的なのです。例えば、最近行われたライフサイクル評価でも、温室効果ガスの排出量が鉄骨造住宅で26%、コンクリート造住宅では31%も木造住宅を上回ると報告されています*。

こうした点から、木材は最も持続性があり、環境にも優しく、建築に適した天然素材だといえるのです。紙パルプ産業においては、化石燃料からバイオマスなどの再生可能エネルギー源への移行、新エネルギー供給システムであるコジェネレーションのさらなる活用がエネルギー効率の高い技術の採用を可能にします。廃棄されるはずの木材を、紙やパルプ生産用に利用するエネルギーに変えることによって炭素排出量が削減されます。林産廃棄物の埋め立て処分の回避などを通じて、直接および間接的に炭素排出量を削減しています。バリューチェーンにおいて木材のCO₂の貯留量を増やし、紙や木製品の回収と再利用を拡大させることで最終廃棄処分から発生する炭素排出量を最小限に抑えるための努力を続けています。

Life cycle of materials

カーボンフットプリントを大幅に削減

カナダの先進的な森林政策により、大気中に含まれる二酸化炭素を集めて森林に蓄積することで、カナダの伐採地から日本に届けられるカナダ木材のカーボンフットプリント**は大幅に低減されます。

例えば、世界的に認知されているアシーナ・インスティテュートの調査によれば、原木伐採と森林管理、製材、トラックによるバンクーバー港までの輸送、東京港までのコンテナ船輸送という一連の流れの中で、日本に輸送されるカナダ産針葉樹材は、排出量の3.8倍の炭素を固定化しているとの調査結果が出ています。

これをCO₂換算で見ると、日本に輸送されるカナダ産針葉樹材は、1㎥あたりで合計719kg/㎥(CO₂換算)の炭素を固定していることになります。一方、伐採地から製材工場出荷までの炭素排出量と工場と東京港の間の輸送における炭素排出量は合計196 kg/㎥(CO₂換算)となっており、炭素固定量から生産および輸送に関連する炭素排出総量を差し引くと、最終的に日本向けカナダ針葉樹材は正味523kg/㎥(CO₂換算)のカーボンポジティブとなります 。その内、輸送による排出量は、バンクーバー港から東京港までが65kg/㎥(CO₂換算)で、木材に固定された量の10%にも及びません。

また、カナダ産木材を使用して35坪の一般住宅を建造した場合、約20㎥の木材使用量となるので、19.52㎥×523kg/㎥(CO₂換算)= 約10トンの炭素を固定していることが分かっています*。これらの調査結果からも、カナダの林産品(SPF)の使用はCO₂削減の点において適切だといえるのです。

カナダの林産品業界は過去20年間、CO₂排出量を大幅に低減しており、1990年レベルより6%削減させるという京都議定書目標値の10倍に当たる削減量を実現しています。また、紙パルプ分野においても1990年の水準に比べて、カーボンフットプリント**を60%削減しています***。

自然が育み、建築で生かす。環境に優しいカナダ産木材は気候変動の軽減に向けた優れた選択肢です。

*出典:FPAC 2010

**カーボンフットプリント:製品の原材料調達から廃棄、リサイクルに至るライフサイクル全体において排出される温室効果ガスをCO₂量に換算し、分かりやすく表示するものです。

***2010年時点

Carbon Footprint