生物多様性
生物多様性は最優先事項
カナダの森林は多種多様な動植物を育む「天然林」
生物多様性保全の積極的な活動が及びにくく樹種の数も限られがちな人工更新林に対して、カナダの森林は「天然林」です。カナダの森林は、寒帯に位置する北部では主にマツやトウヒなどの針葉樹、南オンタリオ地域を含む南部ではカバノキ、モミノキ、ヤナギなどの落葉樹を中心に、日本国土の約11倍に相当する広大な森林に約180種の樹木が茂っています。
また、この天然林は国内に生息する約14万種の動植物および微生物のうち約9万3000種の生息地でもあり、これは全体の3分の2を占めます。そのためカナダの森林は、生態系に対する深い理解に基づいて渓流などの水流とその周囲での伐採の取り締まりや植樹による森林再生など、様々な規制と活動のもと生物多様性の保全に取り組んでいます。
「カナダ寒帯林協定」
カナダは、森林の生物多様性保全を目的に過去20年間*にわたって、様々な規制を定めてきました。これを代表するのが、「カナダ寒帯林協定」(Canadian Boreal Forest Agreement)です。
カナダ寒帯林協定は、BC州が誇る1万年もの歴史をもつ世界最大級の温帯雨林「グレート・ベア・レインフォレスト」(Great Bear Rain Forest)の保護がきっかけとなり、2010年5月に締結されました。カナダの主要森林会社21社と9つの主要環境団体によって結ばれたこの重要な協定により、BC州からニューファンドランド・ラブラドール州まで広がる7200万haもの森林(カナダ国土の58%、カナダ森林の77%に匹敵)が丁寧に管理されています。当協定に含まれる規定は、2つの別のセクターから成り立っているため、どちらかの利害に偏ることなく、バランスのとれた形で、森林の経済的側面や安定した環境に依存する地元コミュニティーのために、森林が保全され、生物多様性が守られ続けているのです。
森林の多様性を維持
カナダでは、森林伐採後の植林は伐採前と似た環境を再現することが法的に定められ、多様な生態系をそれぞれの場所で保持できるよう、その場所に最も適した樹木だけを植え、森林の多様性維持に配慮しています。例えばBC州の広大な森林は6000万haにも及びますが、そのうち毎年伐採されているのは20万haで、0.3%に過ぎません。これら厳しい法規制の順守は、カナダの林産業が採用する3つの森林認証、PEFC傘下のCSAとSFI、FSC制度によって支えられています。
多様性に富むカナダの森林から産出される多種多様なカナダ林産品は、日本の家屋や寺院などの建築物、または家具などの用途にあわせて、色味、風合い、硬さなど、長年にわたり日本の林産品ニーズに応えています。
水辺地帯の保護
生物多様性を維持するのに重要なことは、植物、動物の生息域である渓流などの水流とその周囲、すなわち河川、小川、湖、池の水辺を守ることです。また水辺は、河川による土壌侵食を食い止め、河川の沈泥を低減し、好環境の水辺はさらに動植物を呼び寄せます。渓流などの水流とその周囲の保護は健全な生態系を維持する上で不可欠です。
カナダでは、水辺地帯を保護するため、水辺の近くの森林の伐採や道路建設を制限する法規制が制定されています。例えば、水辺から100mの領域は伐採が禁じられており、BC州では水辺林を伐採する際には、QEP(Qualified EnvironmentalProfessional)という認証を受けた環境専門員による水辺地帯の監査が義務付けられています。
カナダの努力によって守られ続ける森林環境
厳格な森林管理により、カナダの森林では過去20年以上もの間、森林消滅率はほぼゼロに等しく、BC州では100年前よりも森林面積が増加しています。
また、動植物の生息分布が少ない亜寒帯・寒帯に位置するカナダの森林ですが、地球上の生物圏に生息する動植物のうち、鳥、シカ、クマなどの脊椎動物では4.4%、エビ、カニ、二枚貝、ウニなどの無脊椎動物では4.0%が生息することが確認されています。
カナダの公共部門と民間企業間の協力とたゆまぬ努力によって、カナダの森林とそこに生息する生物は、現在そして未来に向けて守られ続けるのです。
*2010年時点