ナーシングホームはるかぜ(特養)

日本有数の温泉保養地、大分県別府市。海と山が近く、昔ながらの路地や家並みもたくさん残されているこの街の住宅街に『はるかぜ』は立地しています。一つの敷地に3棟ある施設の中で、左右シンメトリーで日本的な縦の格子をあしらったウッディな外観。

地球環境にやさしいCO₂の削減を目指し、木造耐火の2×4工法を採用。また太陽光発電システムを採用することにより建設コストの低減とランニングコスト低減の双方を実現しています。幅の狭い道路に接道する敷地に、いかにして”心地よい住環境”のユニットケアを作れるかをテーマにした4層(3階+ロフト)の建物 です。

『はるかぜ』の介護サービスの中で、ナーシングホーム(介護老人ホーム)としてユニットケアを行なっているこの建物は、2009年に新たにツーバイフォー工法によって建てられました。50床を擁し、癒しへの数々の工夫が施されたこの木の家で、介護をめぐるドラマはどのように進展しているのでしょう。皆さんの“五感の体験”をお聞きしました。

ナーシングホームはるかぜ

用途: 特別養護老人ホーム
所在地: 大分県別府市
構造: A・C棟(両端 / 枠組壁工法 木造耐火構造)、B棟(中央部)・3階・ロフト / RC造
敷地面積: 1728.00㎡(523.63坪)
建築面積: 664.4㎡
延床面積: 2094.57㎡(1・2・3階各/649.54㎡、4階/145.93㎡)
設計: (有)吉高綜合設計コンサルタント
施工: 森田建設(株)
竣工: 2009年 4月
施設定員: 定員50名 (1F/ユニット数×2(16名) 2F/ユニット数×2(17名) 3F/ユニット数×2(17名)
設計期間: 2008年 4月 ~ 2008年 8月
施工期間: 2008年 10月 ~ 2009年 4月

インタビュー

湯布院にある古い旅館の、癒しの力にあやかって。

社会福祉法人 洗心会 総合ケアセンター はるかぜ 理事長 施設長 矢野 昌弘さん

“わが家にいる感覚に施設を近付けたい”という思いはずっと前からありました。私事ですが、30数年前に自宅を建て替えたとき、いくつかある工法を私なりに勉強しましてね。それで在来工法とはちがうツーバイフォーが、木造でありながら耐震・耐久に優れていて寸法に狂いがなく、しかもコストが安いとわかって。経済的で性能がいい...結果、自宅はツーバイフォーにしたんですね。そんな自分自身の経験もあり、50床のユニットケア特養ホーム『ナーシングホームはるかぜ』の新築に3階建てツーバイフォーを採用するにあたっては、未知数の不安より“こんなメリットを実現できるにちがいない”という期待感の方が強くありました。

介護施設では前例がないゆえ、慎重になったのはやはりコスト面。夏涼しく冬暖かいという木造の基本的な特性は理解・体験した上ですから、ランニングコストはあまり気にしてませんでしたが、果たしてイニシャルコストがどのくらいかかるのかと。しかし、設計士と施工会社の技術と創意工夫によって、結果として1床あたりにかかるイニシャルコストを“2割削減”することに成功しました。交付金制度になった現在、一般的にRC工法であれば1床1100万円強とされるところを、ツーバイフォーで約800万で実現することができたのです。

ランニングコストについてはまだ最初の1年の経過ですが、光熱費に関しては期待どおりの数値が出ました。50キロワット/住宅17戸分のソーラーシステムと館内全灯のLED化、各階中央にバイオマス燃料によるカナダ製のペレットストーブを配備したことなど、設備面からの効果もありますが、光熱費は単位面積あたりのRC工法の施設と比較して約1/3に。大幅なコストダウンとなりました。もちろん、窓を開ければ風通しがとても良く、閉めれば気密性が高いというツーバイフォーならではの構造特性のおかげで、エアコンの使用頻度が低いというのが大きな要因なのですが。

外観のデザインは、湯布院にある古い有名な旅館のたたずまいをモチーフにしました。趣きがあって静かで、という。現在、入居者の方々の半数は認知症なのですが面会数が増えています。個室の雰囲気が落ち着けて、ゆっくり会話ができるからでしょう。単に木造にしたという以上に、精神的に作用する“空気感”“安心感”そしてここで過ごす人みんなにとっての“優しさ”までも設計していただきました。......設計士の方をはじめ、建築にたずさわっていただいた方々の介護への深い理解と知識、そして“独創的・革新的な介護施設を建てる”ことに賭けた情熱に、本当に敬服し感謝しています。