2013年 6月
日経ヘルスケア :  

2025年に向けた高齢者住宅・施設 ~2×4工法による耐火木造建築~

吉高 久人
吉高 久人
吉高綜合設計コンサルタント
代表取締役/一級建築士

吉高綜合設計コンサルタントは、2×4(ツーバイフォー)工法による耐火木造建築の先駆的存在として知られ、国内で数多くの高齢者施設を手がけてきた。吉高久人氏は、高齢化がピークを迎える2025 年、その先の2050 年を見据えた耐火木造建築のメリット、および日本人が誇るべき木造建築への再評価、そして地球環境への貢献を強調した。

高齢化の進む日本

日本における高齢化は急激に進んでおり、65歳以上が人口に占める割合は、2025 年、より長期視点で2050 年と今後も増加していく。一方、総人口は減少傾向にあり、2050 年頃には既に1億人を下回ると予想される。今後施設を建設するにあたっては、将来のこうした状況を考慮する必要がある。高齢者住宅・施設建設は、国の制度変更の度に対応を迫られてきた。2004 年から10 年来、ツーバイフォーの大型建築に取り組んできたが、制度がどのように変わっても対応可能なツーバイフォーのよさを伝えたい。

耐震性に優れたモノコック構造

まずはツーバイフォーとはなにか。国内で従来木造建築に用いられてきた柱と梁がベースの在来軸組工法に対し、枠組壁工法は北米で発展してきた工法で、2インチ×4インチの木材の寸法をベースにしているため、ツーバイフォーと呼ばれる。1974 年に技術基準が定められ、枠組壁工法としてオープン化された。在来軸組工法は、特定の部分に力が集中するが、4面の壁に加え、屋根、床の6面体による一体構造(モノコック構造)をとるツーバイフォーでは、建物にかかる力が分散化されるため、耐震性に優れる。モノコック構造はもともと極限の強度が求められる航空機用に開発され、スペースシャトル、F1レーシングカーにも採用されるほど極めて強度の高い構造だ。阪神淡路大震災の際に、ツーバイフォーによる建物はほとんど倒壊が見られず、震度6 強の揺れにも耐えられたということが、モノコック構造の高い耐震性を証明している。また、2012年の筑波での竜巻に際しては、屋根が飛ばなかったという実績がある。屋根裏にハリケーンタイという特有の金具を用い、屋根が飛ばない設計をしているため、耐風性もある。

耐火性にも優れたツーバイフォー

木は火に弱いという誤解があるが、実は木は火に強い。ある程度の厚さがある木材は、燃えても表面が炭化するだけで内部に進行せず、強度は低下しにくい性質がある。そのような木材の性質に加え、ツーバイフォーは、壁や床の枠組材が空気の流れを遮断して火の燃え広がりを防ぐ役目を果たしており、耐火性の優れた工法として知られる。さらに、ツーバイフォー耐火建築の技術開発により、2004年にカナダ林産業審議会(COFI )と日本ツーバイフォー建築協会が、国の厳しい基準をクリアし、耐火構造認定を取得したことにより、当社でも設計を手がけ始めた。4階までの大型建築が可能になったことで、耐火木造建築は高齢者住宅においても注目されるようになっている。
 
このうち間仕切り壁の耐火認定試験では、炉に入れて1時間炉内燃焼したが、焦げ目ひとつないという結果が得られている。

コスト節減に貢献

ツーバイフォーのメリットは数多く挙げられるが、イニシャルコスト(初期投資金)も大きなメリット。RC造と比較しても低減可能だ。工期の短縮化が図りやすいため、人件費のコストダウンにもつながる。断熱性、気密性に優れているため、ランニングコストも低減できる。高齢者施設にとって光熱費の節減は課題の一つだが、ツーバイフォーは光熱費に寄与する。光熱費を1/2と大幅に軽減した特養の実例もある。リフォームやメンテナンスしやすい点でもランニングコストを抑えることができる。
 
また、減価償却期間が短いのも魅力だ。鉄筋コンクリート造の法的耐用年数39 年に対し、木造は17年。2050 年に向けての位置づけを考えれば、木造のメリットが注目される。とりわけ他の事業で利益を図れる医療法人などは短期間で減価償却できるため、有利にキャッシュフローを得られる、早い段階での事業転換が可能、など経営上のメリットがある。
 
さらに、平成22年に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に見られるように、国の政策も木造を後押ししている。地方自治体による補助等もあり、行政も木造を推進する流れにある。背景には、木造にはCO₂を吸収する、エネルギー量が少なくCO₂の排出量が少ないといった、エコ的観点からの利便性がある。香川にある特別養護老人ホーム「かざみ鳥」は、国土交通省の木造の先進性ある技術に対する補助金事業の第1回目に採択され、工事費の1割に補助金が充てられた。

高齢者住宅に適した木造建築

特養における入居者を対象とした施設の木造使用度別の心身不調出現率を調査したデータによると、木造使用の多い施設では、ダニ等によるかゆみの訴えが少ない、精神が安定するといった声も多いと言われている。木には衝撃に対する吸収力があるため、高齢者に多く見られる転倒による骨折が減少するというデータもある。スタッフサイドの視点でいえば、足腰への負担が軽減されるというメリットもある。当社では「わが家的な住まい」を目標に高齢者施設を手がけるが、木の持つ温かみが入居する高齢者やスタッフの精神に与える影響は小さくなく、癒しや心の安定につながっている。

サ付き住宅は準備期間に留意点

最新のプロジェクトとして、当社では、2013 年2月に山梨県でサービス付き高齢者住宅を手がけた。ツーバイフォー耐火木造建築のサービス付き高齢者住宅としては、全国で初めて※(第1号)となる。ツーバイフォー耐火建築としてはまだ全国でも珍しい3階建てで、1階に13戸、2階・3 階に各15戸の計43戸が入る。
 
サ付き住宅において注意してほしいのが着工までの準備期間だ。通常は確認申請がおりてから都道府県への登録、着工という流れだが、サ付きの場合は登録後に国への補助金申請手続きが必要となり余計に時間がかかる。確認申請がおりてから着工までに2カ月~3カ月程度時間を要するというのが現状だ。

※一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会調べ

日本でも木造への再評価を

木造先進国カナダの事例も紹介したい。カナダでは、ツーバイフォーはなじみのある工法で、多くの木造建築に用いられている。たとえばブリティッシュ・コロンビア州では現在法律上6階建まで木造で建てることができ、分譲マンションや集合住宅にも用いられている。1階に店舗が入るような場合には1階部分をRC造、2階以上をツーバイフォーという形式を採用するケースも見られる。もちろん、高齢者施設・住宅の多くもツーバイフォーで建てられているので、木造は違和感無く受け入れられている。日本には東大寺や法隆寺といった誇るべき歴史的建造物があるにも関わらず、木造への信用が低い。木のよさを日本人はもっと再認識すべきだろう。2025 年に向けて、将来国の制度がどのように変わった場合でも、ツーバイフォーは対応しやすい工法だ。選択肢の一つとして、ツーバイフォーによる耐火木造建築に関心を持っていただきたい。

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